
音源
Songs
田植え歌
たうえうた
歌詞
Lyrics
アー
大山がヤーサー
横手の空に舞う霧がヤーサー
舞う霧がヤーハレー
ホリャ舞う霧がヤーハレー
米子におりて雨となる
アー十七がヤーサー
掛けたるたすきに血がついたヤーサー
血がついたヤーハレー
ホリャ血がついたヤーハレー
血ではござらぬ紅じゃもの
注、大田植え(太鼓田植え)のときに歌う。前半をサゲという音頭とりが太鼓を叩きながら歌い、後半を早乙女がつけて歌う。
「岡山県緊急⺠謡調査報告書」より
基本情報
Metadata
伝承地 | 大佐大井野 |
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伝承者 | 横張義雄 |
年代 | 1987~1988 |
録音者 | 門屋真二、立石憲利 |
詞型 | 本節(上)5755,(下)575 |
解説
Commentary
唄:横張義雄さん
1911年大佐町大井野で生まれる。全国⺠謡を歌われ、尺八も演奏されていた。
太鼓田植は、古くは田楽(でんがく)として平安時代から伝えられるものとされる。田植歌は、田の神への豊作祈願(ほうさくきがん)の意を込め、地区の共同労働の習俗と結びあって発達した。昭和30年(1955)頃まで神郷地区や哲⻄町地区では田植歌が聞こえた。早朝、牛を使って田を均等にならし(しろかき)、さらに柄(え)ぶりを使って平(たい)らにする。その後、太鼓を打って音頭をとる人を「サゲ」と呼び、帯で体の前に支えた太鼓を両手のバチで打ちながら唄うと、早乙女(さおとめ)がこれに和(か)し、苗を植える。唄は、「朝のうた」からはじまり、続いて「田の神」、「大山登り」となり、昼が近づくと「昼前のうた」となる。午後は、「酒つくり」、「京のぼり」、「田主(たぬし)のやかた」等が唄われ、「夕方のうた」を唄い終わると一日の作業も終了する。
「にいみデジタル博物館」より
太鼓や歌の囃子に合せて共同で田植えをし、併せて鳥取県にある名峰伯耆大山の牛馬守護信仰を背景に農作業で使った牛馬の供養も行う行事である。
楽器や歌で囃す田植は平安時代の『栄花物語』などにみらる。
田植え唄の伝統は韓国、中国、東南アジアをはじめ、労作唄として広く歌われている。
新見哲⻄の高齢者いわく、囃し田は昔、男女の出会いの場でもあり、田植えをする早乙女の手際の良さを見比べて、嫁を探す者たちは品定めをしていたそうだ。げんに、早乙女のタスキや帯の色は既婚者と未婚者とに色分けされていた、とのこと。
嫁さだめの第一条件に「手際の良さ」を重視したのは、家での仕事をまかせた時のためであり、やはり働き者が好まれた。
盆踊りにも「田植え踊り」として踊られている。
現在、大佐では田植え唄は歌われていない。